背景
うるかすの現場感覚から、「AI導入のステップ」という仮説を1本のドキュメントにまとめていました。2つのフェーズ・6つのステップからなる成熟度モデルで、AI導入を「入れる/入れない」ではなく、段階を登っていくプロセスとして捉え直すための地図です。相談者が「今どこにいて、次に何をすべきか」を把握できるようにする、という狙いでした。
ただ、Markdownのドキュメントのままでは、人に見せづらいのが正直なところです。せっかくまとめたので、これを共有しやすい「スライドの見た目の資料」に仕立てることにしました。条件はひとつ、MS PowerPointは使わないこと。手元の環境やその後の運用を考えて、別の手段を探しました。
AI導入の6ステップ、というモデル
先に、元になったモデルだけ簡単に紹介します。
導入は、性質の異なる2つのフェーズに分かれる、という見立てです。
- フェーズA(広げる・攻め): 体感(local) → 最低限のセキュリティ → 共有 → 仕組み化
- フェーズB(依存に耐える・守り): 冗長化 → セキュリティ
一番大事にしている主張は「まず気にせず作る(体感優先)」です。触ったことのない能力について、人は正しく判断できません。だから委員会やROI試算から入るのではなく、まず一人が手元で触って「これは効く」と体感するところから始めます。そのために、ステップ1にはあえて (local)(一人・非機密・手元)という条件をつけています。
モデルそのものの詳しい話は別の機会に譲るとして、ここからは「これをどう資料にして、どう配るか」の話を書きます。
何で作るのがいいか、ツールを比べた
「スライドの見た目」を作る手段はいくつもあります。今回はそれぞれの向き不向きを整理しました。
- Gamma: Markdownを貼るだけで整ったデッキが作れて、編集もしやすいです。手早くきれいにしたいなら最有力。ただし、内容を外部サービスにアップロードすることになります。
- 自立HTML: HTMLとして自分でデザインする方法です。自由度が高く、外部送信もなく、成果物を自分で所有できます。PDFにも書き出せます。
- Marp: Markdownからスライドを作れるので、元がMarkdownの今回とは相性がよく、ソースをそのままGitに残せます。見た目は素朴めです。
- Googleスライド + Gemini: 共同編集は強いのですが、ドキュメントから一発できれいなデッキを起こすのは苦手で、手作業が多くなります。
- NotebookLM: そもそもスライド生成のツールではありません(音声・動画概要や要約が得意です)。今回の配布用スライドには不向きでした。
比べた結果、今回は「デザインを自分たちで握れる・外部に送信しない・自分で所有できる」を優先して、自立HTMLで作ることにしました。
出来上がったスライド
Claude CodeのArtifact機能でHTMLを生成し、全16枚のスライドにまとめました。
- 元ドキュメントの核である「依存度が段階的に上がっていく昇順チャート」を、図の背骨にしました。
- フェーズの性質を色で語らせています。フェーズA(攻め)は琥珀、フェーズB(守り)はティール。全スライドで一貫させました。
- 矢印キーやスペースでスライドを送れて、ブラウザの印刷からそのままPDFにも書き出せます。
- ライト/ダークの両方の表示に対応しています。
外部ファイルを一切読み込まない「1ファイルで完結するHTML」なので、渡した相手はブラウザで開くだけで、操作までそのまま動きます。
ファイルをどう管理・共有するか、相談した
今回いちばん考えたのは、実は中身よりも「これをどう配るか」でした。AIに作ってもらった成果物を、どういう形で人に渡すのがいいのか。ここはClaudeと相談しながら決めました。
まず、Artifactのリンクをそのまま渡すのは見送りました。Artifactはデフォルトで非公開なうえ、claude.aiに依存する形になります。社外の相談者にそのまま渡す用途とは、相性がよくありません。
代わりに、外部依存ゼロの自立HTMLを「母艦」にすることにしました。これを docs/slides/ に置いて、Gitで管理します。手直ししてもバージョンが残りますし、あとからPDFにも別ツールにも変換できます。
社外の相談者へは、このHTMLファイルをそのまま渡すのがいちばん確実です。メールに添付しても、Driveで共有しても、相手はブラウザで開くだけ。操作も生きています。
PDFが必要になったときの手段も確認しました。ひとつは、ChromeでHTMLを開いて印刷から「PDFに保存」する方法です(このとき「背景のグラフィック」をオンにしないと、色が飛んで真っ白になります)。もうひとつは、ヘッドレスChromeでコマンドから一発で書き出す方法です。繰り返し出すなら、後者のほうが楽です。
やってみて
出来上がったのは、まだ叩き台のバージョン1です。これからこの方法で何人かに試してもらい、反応を見ながら直していく予定です。
この「まず作って、あてて、直す」という進め方そのものが、実はモデルのステップ1(まず気にせず作る)を地で行っています。机上のコンサルではなく、自分たちが体感して登ってきた地図。そう言えることが、このモデルのいちばんの裏付けになると思っています。