背景
ある文学賞に、小説を書いて応募してみることにしました。
思いつきだけで書き始めても勝負にならないだろうと思い、まずは「規定を調べる」「傾向を調べる」「AIと壁打ちしてプロットを固める」という順番で準備を進めることにしました。この記事は、その準備プロセスの記録です。応募前のため、着想の中身・プロット・作品タイトルはすべて伏せています。
レギュレーションを調べる
まず公式サイトで応募規定を確認しました。字数の上限、部門の区分、締切、応募形式(Web応募かどうか、作者情報を含めてよいか)など、基本的な条件をひととおり洗い出します。
近年の賞では「AIを利用した場合はその方法を申告する」という規定が設けられていることも珍しくありません。今回応募する賞にもそうした条項があったため、AIとのやり取りをどう記録しておくかを、執筆に入る前の時点で決めておく必要がありました。あとから「あの会話が根拠だった」と思い出すのは大変なので、着想の段階から発言ログを台帳的に残す方針にしました。
受賞のコツを調べる
規定と並行して、過去の受賞作の傾向や「評価されやすいポイント」も調べました。文体の癖、テーマの選び方、フォーマットの意外性など、賞ごとに何が評価軸になっているかは結構違います。
同時に、自分の着想の弱点も洗い出しました。今回の着想は「言われれば誰でも思いつきそうな話」に近く、このままでは目新しさに欠けると感じたので、着想をどこかで一段ひっくり返す必要があるという課題を先に言語化しておきました。
AIとの壁打ちでプロットを固める
ここからがAIとの壁打ちです。やり方はシンプルで、思いついたことをそのまま投げて、返ってきた複数の視点のうち「これは使える」と感じたものだけを採用していく、という繰り返しです。
工夫したのは、自分が出したアイデアとAIが出したアイデアを別々に採番して、「どの発言がどの発言から派生したか」を紐づけながら台帳に残したことです。あとで見返すと、構造上の転回点になったアイデアはほとんど自分の発言側にあり、AIはそれを構造として整理・翻訳する役回りになっていました。これは応募規定にあった「AI利用方法の申告」を書くときにも、そのまま裏付けとして使えそうです。
途中、「オチが思いつかない」という壁にぶつかった場面もありました。このときは無理にオチを考えるのをやめて、先に世界観の細部を固める方向に方針転換しました。抽象的な話がひっくり返ることよりも、具体的なモノひとつの意味が変わることの方が読み手に効く、という気づきがあったためです。方針を変えたことで、思いがけない方向に案が伸びていきました。
壁打ちの質について気づいたこと
一連のやり取りを振り返って感じたのは、AIとの壁打ちには「地盤固め」と「飛躍」の両方がバランスよく含まれていた、ということです。
規定の再確認や、弱点の指摘、採用しないアイデアの理由づけといった地に足のついたやり取りがある一方で、AIの言葉をきっかけに自分の直感が急に働いて、まったく別の連想が生まれる瞬間もありました。理詰めの検討だけでは出てこない飛躍と、飛躍したアイデアを地に足がついた形に戻す作業が交互に起きていて、これが一人で考えているときにはなかなか再現しづらい進み方だと感じました。
AIだけに頼らない工夫も
ここまではAIとの壁打ちの話でしたが、これだけで進めるつもりはありません。直観が降りてくるタイミングは人によって違っていて、自分に合ったやり方が別にあるはずだと思っています。たとえば、何も記録せずに火を眺めながら考える時間をつくる、といったこともその一つです。
AIとの壁打ちは「言葉にして返ってくる」からこそ地盤固めと飛躍を往復しやすい一方、記録しない時間には別の種類の飛躍が起きる気がしています。まだ試している最中ですが、この二つを併用していくつもりです。
まとめ
- 応募前の準備は「規定を調べる」「傾向・コツを調べる」「AIと壁打ちしてプロットを固める」の順で進めた
- AIとのやり取りは、自分の発言とAIの発言を分けて台帳に残すと、あとから振り返りやすく、AI利用申告の材料にもなる
- オチに詰まったら抽象を考え続けるのではなく、具体の細部を先に固めるほうが突破口になりやすかった
- 壁打ちの価値は「地盤固め」と「飛躍」が両方起きるところにある
- AIとの壁打ちに加えて、記録せずに考える時間など、自分に合った直観の呼び込み方も併用していく予定
このあとはプロットを本文に落とし込む作業に入ります。着想・プロット・タイトルは応募が完了するまで非公開とし、進捗があればまた抽象化した形で記録する予定です。