背景
クライアント向けの作業資料をMarkdownで書いています。バージョン管理もしやすく、AIとの相性も良いので、社内では基本これで統一しています。ただ、これをチームメンバーに「気軽に見てもらう」ところで詰まりました。エンジニアでないメンバーに、GitやMarkdownエディタを使ってもらうのは現実的ではありません。
候補に挙がったのはGoogle Driveでした。すでにチームで使っていて、リンクを送るだけで開けます。ただし、Markdownファイルをそのままアップロードしても、Google Driveのプレビューは整形されず、#や**が記号のまま表示される平文になってしまいます。ここから、思ったより長い試行錯誤が始まりました。
試した方法、うまくいかなかった方法
まず疑ったのはChrome拡張機能でした。Google Drive上でMarkdownをレンダリングしてくれる拡張がいくつか存在します。野良の拡張機能を入れるのは怖いので、ソースコードを読んで検証しました。要求している権限は最小限(activeTabとstorageのみ)、外部への通信も一切なし。フォークの経緯もGitHub上で追跡でき、乗っ取りの形跡もありません。「これなら安全」と判断してインストールしたのですが、実際に動かしてみると、まったく反応しませんでした。
DevToolsで原因を追ったところ、拡張機能が前提にしているDOM要素(role="document")が、今のGoogle Drive側にはもう存在しないことが分かりました。拡張機能自体は安全でも、Google Drive内部のマークアップが変わればそれだけで壊れる、という脆さを目の当たりにしました。個人利用ならまだしも、チーム全員に配る手段としては危ういと判断し、見送りました。
次に試したのはpandocによるdocx・pptx変換でした。コマンド一発でWordやPowerPoint形式に変換できるので便利そうに見えましたが、実際に変換すると体裁が思ったように整わず、表のレイアウトや改行の入り方が崩れました。ここも見送りです。
実は一番シンプルな方法だった
最終的にたどり着いたのは、Google DriveのAPI経由で、Markdownの中身をtext/markdownとしてそのままアップロードする方法でした。Google Drive側が自動でGoogleドキュメント形式に変換してくれて、見出し・太字・表がちゃんと整形されます。Googleドキュメントの「マークダウンから貼り付け」機能を手元で試した時と、同じ変換エンジンが使われているようでした。
拡張機能もpandocも要らず、Google DriveのAPIを直接叩くだけ。回り道をした分、たどり着いた答えは拍子抜けするほどシンプルでした。
途中でいくつか学んだ癖もあります。アップロード直後のレスポンスで返ってくるファイルサイズが「1」と表示されるのですが、これはGoogleネイティブ形式の仕様で、失敗のサインではありません。また、今回使ったAPIには更新・削除・リネームの機能がなく、中身を直すたびに新しいファイルを作ることになります。最終的な後片付け(古いファイルの削除など)は人の手作業に頼ることになりました。
表の列幅は、あきらめて手動調整に
もうひとつ壁にぶつかったのが表の見た目でした。Markdownの記法には列幅を指定する仕組みがなく、変換後は列がすべて均等幅になります。短いラベルの列と長い文章の列が同居すると、短い方はスカスカ、長い方は折り返しだらけで縦に間延びしてしまいます。
列を減らして統合する案も試しましたが、「表はそのまま残したい、幅は自分で調整する」という判断に落ち着きました。ツール側で自動的に解決しようとせず、人が最後に整える部分を残す。これも今回の学びの一つです。
手順を資産化した
同じ作業は今後も発生しそうだったので、確立した手順をナレッジとして書き残し、Claude Codeのスキルとしても呼び出せるようにしました。次に同じ依頼が来たときは、Chrome拡張の検証からやり直す必要はもうありません。
ついでに、セッションの終わりに使っているログ記録用のコマンドにも手を入れました。作業の感想を毎回ひとこと聞かれるようにして、その回答を記録に残すようにしています。
やってみて
ちょっとした変換のつもりが、思ったより苦労しました。pandocは体裁が崩れるし、Chrome拡張機能は仕様変更でいつの間にか動かなくなっている。よくある作業だったからこそ、この手間がなくなったのは素直にうれしいです。
今回の一件で、Markdownの方が他の形式より加工しやすいという実感も強くなりました。データの本体はMarkdownで持っておいて、共有する相手や場面に応じてGoogleドキュメントやスライド、Webページに変換する。そういう運用が、今のところ一番しっくり来ています。